2025-06-27

プロの「おすすめ」

自宅から20分ほどのところにあるお寺で、アルバイトをしています。最初は、忙しいお正月にお守りの売り子として呼ばれ、そのうち「ライターの仕事ってここ(お寺)でもできるんだよね?」「ライターの仕事しながら電話番してくれないかな?」と数時間の留守番を頼まれるようになり、段々と出勤日が増えました。

ライター業が忙しい時には、お寺にノートパソコンを持ち込んで、原稿書きをしています。それが許される職場って、すごいですね。「副業可」どころじゃありません。

カメラマンさんに「こんな写真が欲しい」とオーダーするために撮った仮の写真

そんな勤務先のお寺が、ホームページを作り直すことになりました。今まで使っていた更新のサービスが終了することになったのです。月に半分ほどをお寺で過ごすようになって、もう4年目。せっかくホームページを作り直すならこんなページがほしい、こんな見た目がいいなどと、ライターとしてもお寺の従業員としても、ワクワクしています。

掲載する原稿の内容を一任されたこともあり、デザイナーさん&エンジニアさんからなる制作チームとお寺との打ち合わせに同席しました。その席で、ドメインをどうするか、という話になったのです。

住職さんの大学の後輩でもあるデザイナーさんが言うに、現在のお寺のホームページは「悪いホームページの見本のよう」だそうで、セキュリティ対策も不十分だし、SEO対策もしっかりできていない。何よりお寺なのに、ドメインが「.net」なのもどうかと思う、とのこと。

ホームページ作りませんか、と営業されて作っただけで、ドメインなんて気にしたことなかった…と戸惑う住職さん。私も私で、お寺に「.net」は確かにちょっと変だな、IT企業じゃないんだから…とは思いつつも、メールアドレスが変わったりする煩わしさを越えてまでも、変更するべきなのかな、と首を傾げていました。

デザイナーさんは信頼性の点から変更をすすめてくれましたが、お寺は企業ではなく、BtoBでもありません。完全なBtoC。例えば厄払いがしたくてお寺を探している人(C=カスタマー)がいたとして、このお寺のドメインは「.net」だ、変だ。信頼性に乏しいから、こちらの「.com」のお寺に行くことにしよう…  と。そんなことは、きっと、ないのです。

いえ、「.net」を使い続けたい! というわけではないのです。ただ、決め手がないというか、「確かに『.net』じゃまずいよね!」という、納得が、足りないだけです。

「僕たちとしては『.net』からの変更をおすすめします」「けれどもちろん、最終的には、お寺が決めることです」

そう言う、制作チーム二人の表情を見て、ああそうか。これは、アレだ。 と、思い至りました。

プロとして、何かをおすすめする。けれど最終決定は、クライアントがする。そういうシチュエーションは、ライターとして(制作側として)、とてもたくさんあります。費用的なことや締め切り的なこと、さまざまな事情が絡むために、もちろん「おすすめ」をゴリ押しするわけにはいかない。けれど「おすすめ」は本当に「おすすめしたい」というあの感覚。

クライアントの制作物に関わりながら、ここの文言、変えた方がいいですよ(もしくは変えない方がいいですよ)、何もかも盛り込もうとせず、言いたいことはしぼった方がいいですよなどと、クライアントのことを考えて、さまざまにおすすめした事項を、大した理由もなく却下されたときのやるせなさ。ああそうか。これは、アレだ。

ホームページ制作のプロが、「お寺に『.net』はおかしい」「ほかのドメインがいい」と言っている。どっちでもいいんですけどね〜 とかいうニュアンスではなく、まあまあ強めに、おすすめしてくれている。事業と合わないドメインを使うことの違和感を、私のような素人は感じないけれど、プロは信頼性を損なうと感じるほど、大きな問題だと考える。

それなら、そのプロの判断を信じよう。というわけで「.net」を手放して「.jp」に変更することになりました。

現在はサイトデザインをおこしてくださっているところ。それが上がってきて構成にOKが出たら、各原稿を入れて、必要な写真を撮って、コーディングしていきます。夏が終わる頃にはできあがるかなあ。「.jp」の、新たなホームページ、楽しみです。

ここまで読んでくださった方が誤解しているとは思わないのですが念の為、「.net」というドメイン自体は何も悪くはないですよ。お寺という場所には合わないのではないか、合わないドメインを使うことが、信頼性を低くするのではないか という話ですよ。

(担当:自分個人が持っているドメインは「.net」で、メールアドレスも「.net」の、加世田侑季)

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