2025-04-30

「福岡大博覧会」って、知っていますか?

「大阪・関西万博EXPO2025」が開催中だが、福岡でも、ちょうど50年前の1975年、「福岡大博覧会EXPO FUKUOKA」(通称「福岡博」)が今の時期、福岡市の大濠公園で開かれていた。

博覧会といえば、その5年前の1970年、あの岡本太郎の「太陽の塔」で有名な日本万国博覧会、通称「大阪万博」の大ヒットがあったので、「福岡でもやろう!」となったであろう経緯は想像に難くないが、この福岡博は、公式には山陽新幹線が博多まで延伸開通したのを記念して開催されたもの。

当時は「夢の超特急、新幹線が自分たちの街にやってくる\(^O^)/」というできごとは一大事で、1975年の岡山〜博多間の開業に沸いた沿線の駅には、開業時に大勢が押し寄せ、新幹線に乗れなかった人たちのなかには新幹線に手を合わせる人もいたほどだ。

博多駅でも、開業当日は、国鉄総裁、福岡県知事、福岡市長らによるテープカットが執り行われ、「博多どんたく」の伝統的な衣装を身につけた人たちがホームで踊りながら盛大に一番列車を出迎えている。

そんなわけで、新幹線開通記念の福岡博も地元でそれなりに話題となり、当時は中学生だった俺も、家族と小倉駅から新幹線に乗って出かけた。

新幹線に乗ったのは、その時が初めてだったが、博多までは十数分であっという間だったし、車窓の景色もそんなに映えてもなかったしで、期待していたほどの感動はなかった。それなのに、休み明けの学校で「新幹線、乗ったよ!」と、未経験組にちゃっかり自慢できたのは、時代のおかげだ。

で、肝心の福岡博。自分で「知っていますか?」って、振っておいて身も蓋もないが、今となっては、個々のパビリオンや展示内容はほとんど思い出せない。

というか、たったひとつの展示物しか覚えていない。

それは、大濠公園の池に設置された、首の長い恐竜の実物大模型で、当時はわからなかったが、調べて見たら、福岡の靴メーカーが出展した、ブロントサウルスをモデルにした動く模型らしい。

人の流れに乗って池のほとりを歩いていたら、池の中から、ざばーっと頭をもたげて恐竜が現れ、開けた口から水を吐き出した。その瞬間、心臓が止まるかと思った。

大げさに思われるかもしれないが、「巨像恐怖症」、つまり、大きな仏像とか巨大な建造物を見ると恐怖心を抱く性質をもった人にとっては、こういう類の造り物は目に入るだけで足がすくむのだ。

自分が巨像恐怖症だと知ったのは大人になってずいぶん経ってからだが(たぶん、昔はそういう心理状態を指す言葉さえなかったから)、個人的には水族館のジンベイザメとか、東京タワーとかでも、間近で見ると得も言われぬ不安感に支配されてしまう。

ま、それはさておき、池から突然現れた恐竜のインパクトが強烈すぎて、そのほかは「人混みのなかを歩き回って疲れた」という、ぼんやりとした印象しか残っていない。それでも、時間が経ってからも「あれはすごかった」などと、家族の間で話題になった。

閉会後の跡地活用とか環境負荷の問題、莫大な建設費と実質的な経済効果に関する議論など、万博を始めとする期間限定の大型イベントに対して、「開催を止めるべき」「時代錯誤」とする意見が目立つご時世になった。たしかにそうかもしれない。

ただ、日本における高度経済成長期のあだ花のように次々と開催されては終わっていった博覧会には、独特の高揚感があった。薄れゆく記憶の奥底で、埋み火となって微かに灯る華やかな感傷は、消えずにいてほしい。

(堀 雅俊)

*画像は、“見ると幸せが訪れる”といわれ、2年後には引退予定の新幹線「ドクターイエロー」。小倉駅にて撮影。みなさまの幸せを願って♪

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