2023-04-10

周知の事実とは

焼き芋は、皮ごと食べる方が体にいいとされます。皮にポリフェノールが含まれているし食物繊維も摂れるから、ということです。

けれど、これを読んだ今、「へえ〜!知らなかった!そうなんだ!」と驚いている人は少ないのではないでしょうか。

さつまいもの皮の有用性については、広く大勢が知っている、『周知の事実である』と思われるのですが、実際に焼き芋の皮をむいて食べる私に「皮をむいて食べるなんてダメよ」と言う人はいるのです。私が焼き芋の皮をむくのは〝そうしたいから〟ではなく〝有用性を知らないから〟に違いないと考えるのですね。『焼き芋は皮ごと』を、私は『周知の事実』だと思っているけれど、その人は『知らない人もいる情報』だと捉えているということです。

何を周知の事実とするのか。これが、大変難しいのです。

身近な人たちにリサーチした結果では、焼き芋情報は『周知の事実』でいいのでは? 注意された私は物知らずとして扱われたのでは? となったのですが、では、それが里芋だったら? キウイだったら? これらは周知の事実なのか?(里芋もキウイも皮ごと食べられます)

先日、提出した原稿に修正が入りました。

「スケーラビリティを持ち」と、インタビューの発言そのままを書いていた部分に、「スケーラビリティ(業務の増大に適応できる能力)を持ち」と注釈が加筆されたのです。

その修正を見て、私自身も「スケーラビリティ?」と、一瞬考える時間があったことを思い出しました。トレーサビリティとか、サステナビリティとか、アクセシビリティとか、『○○+アビリティ(ability)』の形式の用語がたくさんあるため、「スケーラビリティ? あ、スケール+アビリティね、ふんふん」と、分かったつもりになってしまい、そのままスルーしたのです。注釈をつける方が親切だったな、と反省しきり。

どちらかと言うと私は、自分が知っていることは多くの人も知っているだろうと考えてしまう傾向があります。けれどクイズ番組で『防災グッズの備えがある人の割合は』『マイボトルを使用している人の割合は』などと、世間一般的にはどうだと思いますか? という問題が出されるのを見るにつけても、一般の認知度・周知の事実の定義とは、いかに難しいものかと思います。

親切を心がけすぎて注釈をつけまくるのが正解ではないですし、何よりそんな原稿は読みにくい。かと言って、たくさんの人を置いてけぼりにするのももちろん避けたい。『周知の事実』を適切に判断して、読みやすい原稿を書きたいものです。

(加世田侑季)

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