パンの耳からビールを造る
「パンの耳でビールができるっち? そんなん聞いたことない」
と思ったあなた。
私もそう思いました(^_^;
昨年、取材の仕事で知ったのですが、小倉北区米町にあるビアレストラン『門司港地ビール工房』を運営する門司港レトロビール株式会社が、この「パン耳ビール」を造っているのです。正式には『ブレッドヴァイツェン』という名前。
話を聞いてみると、そもそもこのビールを造る発端となったのは、クラウン製パン株式会社でした。クラウンさんといえば、ほとんどの北九州市民は子供の頃、学校給食でお世話になっているので、ご存じの方もいるはず。
現在も、1日に約8万食もの給食用食パンを地域の学校に供給しており、食パンの製造段階で切り落とされる端っこ、いわゆる食パンの耳部分が大量に発生するのだそうです。多い日で100kg近い量になるとか。
そうした状況が続くなか、「廃棄処分になるパンの耳をなんとか有効に再利用できないものか」と検討を重ね、たどりついたのが「ビールにする」という方法。パン作りの教科書には「紀元前からパンはビールの原料になってきた」といった記述があるそうです。
それで、同じく北九州に拠点を置く門司港レトロビールさんに、相談が持ち込まれたわけです。パンからビールを造っている事例は世界的に数例ある程度で、いくらビール造りのプロとはいえ「やってみないとわからない」話。
それでも「食品業界でずっと課題となっているフードロス問題解決のきっかけになるのなら」と、新商品開発へ。
原料となる小麦麦芽の一部にパンの耳を代替品として用い、試行錯誤の末に、およそ半年かけて『ブレッドヴァイツェン』が完成。結果的に、パンを使っている分、同社の従来商品より「小麦の風味が強く感じられ、パン由来のまろやかな味に仕上がった」とのこと。
「あじおんち」「ばかじた」の私がさっそく飲んでみたところ、そういわれると、そんな気がするような…(^_^;
とにかくおいしいビールでした。
酒税法上は「発泡酒」ながら、同社のヴァイツェンビールと遜色ない味にこだわって造られているそうで。ビアレストラン『門司港地ビール工房』でも提供中です。
「環境にやさしい」うえに「ビール原料の削減」にも貢献。しかもおいしい。
北九州の二つの会社が協力して始めた、心意気あふれる取り組み。SDG’sの観点から、もっともっと注目されればと願っています。
(堀 雅俊)
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