資さんしか勝たん
福岡県民が一番好きな麺類は、ラーメン。
他の地域の人たちからはそう思われがちなのだが、
実のところ、福岡の人間はかなりうどん好きで、
「ラーメンより、うどん」という人は多い(*)。
福岡市博多区の承天寺に「うどん発祥の地」の石碑があり、
福岡では「うどん居酒屋」なる業態が盛況であるところからも
うどん人気がうかがえる。
私も(ラーメンも好きではあるものの)うどん派であるが、
TNCことテレビ西日本の情報番組
「ももち浜ストア」内の一コーナーで
イケメンローカルタレントの岡澤アキラ氏が
福岡県内のうどん店を巡って全制覇をめざす
「うどんMAP」を、県民ならほぼ全員が知っている(*)。
高山質店のCMキャラクター「買いトリくん」
と同じぐらい、ほぼだれもが知っている(*)。
そんなわけだから、福岡県内には
地域の人に長く親しまれてきた人気うどん店がたくさんある。
うどんチェーンだけでも、
ウエスト、資さんうどん、牧のうどん、因幡うどん、やりうどん
などがあり、どれにも行ったことがない県民は
ほぼ皆無と言っていいどころか、
「頻繁に利用する」という人が実に多い(*)。
なかでも、「資さん」と書いて「すけさん」と読む、
「資さんうどん」は、ここ北九州発のうどんチェーンであり、
北九州市民にとって、「資さん」のうどんといえば、
「シロヤのパン」「揚子江の豚まん」と並ぶ
三大ソウルフード(**)なのである。
今や福岡県下のみならず他県へも進出した
資さんうどんであるが、市民の食生活を支え続けてきた
同店に対する市民の愛着には並々ならぬものがある。
数年前に、正月にもかかわらず、
お昼時に資さんのうどんが食べたくなった私は、
近くの店へ足を運んだところ、すでに満席。
ならばと、その近隣店へ足をのばすも、ここも満席。
「ええいままよ!」と、2時間かけて6店舗をかけずり回ったが、
どこも満員で、なかには屋外にまで行列している店舗もある始末。
「北九州市民は、初詣と初資さんがセットなのか?」と、
愕然とし、路上で膝を折りうずくまった。
その時は資さんファンとして出遅れてしまったが、
私だって負けてばかりはいられない。
ライター仲間と「資部(すけぶ)」を結成して部活動をしている。
部活動(あまり行けていない店を利用する)へ向かう途次でも、
「資さんクイズ」を出し合い、お互いの「資さん愛」を高め合う。
ここのところ、コロナ禍で部活動もままならない状況ではあるが、
生きていくなかで緊張を強いられる局面、
ふと心が折れそうになる瞬間に遭遇したら、
「資」という字をそっと手のひらに書いて、
肉ごぼ天うどんやおでん、ぼた餅の味を思い出し、
心の平静を取り戻している。
で、何が言いたいかというと、
そのようにして、日々慎ましくも、資さんのおかげで
元気に生きられている私、さらには北九州市民、福岡県民、
県外にも数えきれないほどいる資さんファンに、
この夏、すばらしいギフトがもたらされたのである。
資さんうどんの公式ファンブック「SUKESAN BOOK」発売。
全128ページには、資さんうどんの歴史、商品へのこだわりから、
常連客や従業員でも知らなさそうな、人に話したくなるトリビア、
そして大勢の資さんファンの声が、ぎっしり詰まっている。
この本を作った「シティ情報ふくおか」は「福岡麺本」も出しているし、
前述の「うどんMAP」の場合、4冊が書籍化されて好評らしいが、
ひとつのうどん屋さんだけをこれほど深く掘り下げた本というのは、
ほかではまず見当たらないのではないだろうか。
つまり、ファン待望の、空腹者垂涎の、全米が泣くかもしれない、
オールカラー総天然色、決定版の永久保存版なのである(***)。
埼玉に住む妹と甥から
「(某大手オンライン書店で)一時的に売り切れてて手に入らない」
と泣きの連絡が入ったので、こちらのコンビニでゲットして送ってやったが、
とにかくひとりでも多くのうどん好きの手もとに、この本が届くことを願う。
資さんをこよなく愛するファンが増えることを切に願う。
【注記】
*=個人の実感ですが、信憑性はかなり高い自信があります
**=諸説ありますが、最有力といえるでしょう
***=多少の誇張はありますが、読み応えのある本です
(堀)
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